立憲民主党・農林水産キャラバン(隊長・田名部匡代参院幹事長)は4月8日、鹿児島県さつま町・薩摩川内市・いちき串木野市・日置市を訪れました。

 農林水産キャラバンは、「農政の憲法」と言われる「食料・農業・農村基本法」の改正案が今国会で審議されることを踏まえ、全国各地の農業現場を訪問し、各地で得た地域の声を党の政策に反映させ、地域と一緒に新しい農林水産政策を作っていく取り組みとして、昨年から実施しているものです。「食料・農業・農村基本法改正案」は、3月26日より衆議院での審議が始まっています。今回のキャラバンは、基本法改正案の審議入り後、初めて実施されたもので、地域の声を最大限、法案審議に活かすとともに、政策づくりに反映させ、地域に根ざした新たな農林水産政策を検討していくこととしています。

 今回は北さつま農協畜産部薩摩中央家畜市場における子牛の競り市を視察、その後、青年農業者、農業関係者との意見交換、観光いちご園の視察と同園経営者との意見交換、漢方薬原料薬草栽培農家をはじめとする地域農業者との意見交換と薬草を栽培しているほ場の視察を行いました。同隊隊長の田名部匡代参院幹事長、野間健、渡辺創衆院議員が参加しました。

■子牛の競り市を視察(さつま町)
 北さつま農協畜産部薩摩中央家畜市場を訪問、子牛の競り市を視察しました。競り市に先立ち、農家の皆さんから、飼料高騰と牛の価格の下落による経営悪化、廃業の危機といった切実なお話を伺うとともに、戸別所得補償制度への期待の声をいただきました。

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■青年農業者と車座集会(さつま町)
 さつま町の野菜農家を訪問、近隣の青年農業者と意見交換を行いました。農業者からは、「小規模農家は補助事業の対象になりにくい」「元気な高齢農家の意欲をそぐような政策が多い」「農地を維持している兼業農家に対して目が向けられない」といった政策に対する不満の声がありました。また、「大規模化しない農家への補助が必要」「少額の無利子融資があればうまく回っていく」「自分たちで価格転嫁ができる売り方ができるようになれば、農業も変わってくる」「高温耐性品種の育成が必要」「水利施設の老朽化対策を手厚くしてほしい」「農家の経営診断をする専門家があればいい」といった要望、「農家も経営について学ぶ必要性を感じている」との発言がありました。さらに、戸別所得補償制度の必要性と課題、6次産業化の課題、新規就農者の定着率の低さ、農地維持に向けた兼業農家への期待について、意見・指摘がありました。

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■農業関係者と意見交換(薩摩川内市)
 薩摩川内市において、土地改良区、農業委員会関係者等と意見交換を行いました。関係者からは、「2024年問題の影響か、農業機械の部品の入荷が遅くなった」「農業機械の借金の返済、肥料代の高騰のため、経営は赤字」「新規就農者が、収支が合わずに夜逃げをしたという例が数件ある」といった地域農業の実情についての発言、「水稲を食害するジャンボタニシの駆除を進めてほしい」「水田活用の直接支払交付金(水活交付金)の交付に必要な5年間に1度の水張りは、転作をずっとやっているからできない。撤廃してもらわないと耕作放棄地が増える」といった要望、意見がありました。

■観光いちご園の視察と意見交換(いちき串木野市)
 いちご狩り専門園㈱いちごハウス木場を訪問、園内を視察し、同園経営者と意見交換を行いました。同園は、約40年前から開設しており、県内観光農園の草分け的存在で、土壌診断の結果、施肥を改善していちご栽培を継続、客の動線にあわせてハウスの改良を行い、コミュニケーションを重視して、リピーター客を確保するなど、経営の取り組み状況について説明がありました。資材費が高騰する中、設置して20年になるハウスの建て替えをどうするかが課題であるとのことでした。また、新規就農者の定着率の低さを指摘し、農産物の売上を支えている中堅農家に対する声掛けをしてもらいたいとの要望がありました。

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■漢方薬原料薬草栽培農家・地域農業者と車座集会(日置市)
 漢方薬原料薬草栽培農家を訪問、地域農業者との車座集会を行い、漢方薬の原料となる薬草を栽培しているほ場を視察しました。

 漢方薬原料薬草栽培農家から、薬草栽培を始めたきっかけや漢方薬製薬会社との契約についての説明があり、「薬草栽培は除草剤の散布に制約があるなど手間がかかる」「薬草の出荷前の調整作業を行う人材の将来的な確保に不安がある」といった現状と課題についての発言がありました。また、地域の農業者からは、「高騰する資材費の価格転嫁が困難でジリ貧状態である」「2024年問題が農産物価格に与える影響を懸念している」「JAのガソリンスタンドが閉鎖され不便になった」「農業のイメージチェンジが必要」「基盤整備に際し、現場の意見を反映させることが必要」といった意見、要望がありました。田名部議員は、「先が見通せない農政ではなく、再生産可能な農業を応援できる仕組みを作りたい」と話しました。

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 終了後、田名部議員はマスコミの取材に応じ、「全国いろいろ課題が違うが、勉強になった」「薬草の国内生産も食料安全保障の一つ。漢方薬の原料である薬草の国内生産、農業と医療の連携にもしっかりと取り組んでいかなければならない」「国の施策である増頭増産に取り組んできた生産者にしわ寄せがくると農業をやる人がいなくなる。利益が出せず価格交渉の上で立場が弱い生産者に対し、直接支払いで補填できる仕組みがあったらいいと思う」と語りました。

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