参院本会議で31日、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案」の審議がおこなわれ、「立憲民主党・社民」を代表して那谷屋正義議員が賛成の立場から討論をおこないました。本法案は、公立小学校の学級編制の標準を今後5年かけて35人に引き下げるもの。

 那谷屋議員は冒頭、本法律案を含め、政府提出法案の条文や関連資料に合わせて130件以上の誤りがあったことを取り上げ、「ここまで幅広い省庁にわたって、数多くの誤りが見つかったのは、前代未聞の事態であり、国会軽視も甚だしい。自公による長期政権、そして菅政権の奢り、緩みのせいではないか。法案の成立を急ぎ、成果・実績としたいがために、法案の策定から提出までの立法作業に無理が生じていたのではないか。間違いや訂正が存在する法案を国会に提出されては審議することはできない」と述べ、政府には猛省を促しました。

 続いて、10年前の民主党政権で、教育政策の「一丁目一番地」として小学校の35人学級制を掲げ、小学1年生の35人学級は制度化したものの、その後の政権交代によって、その政策実現が妨げられてきたことを振り返りました。今回の法案でやっと全学年で35人学級への道筋がつくことについて、「教育に携わる関係者が長らく渇望していた制度であり、この度の萩生田文部科学大臣をはじめ、文部科学省の立法に対するご努力には率直に敬意を表したい」と述べました。

 那谷屋議員は「教育現場は一人ひとりの子どもたちに向き合い、触れ合う中で、その可能性を引き出すためにきめ細かな指導をすることが必要であり、協働的な学びを実現するためには、安全・安心な教育環境を整備する必要がある」との考えを示しました。そのためには、本法律案の内容に加えて(1)中学校段階においても35人学級を早期に実現する(2)将来的には30人学級を含め検討し、各学校での望ましい指導体制の構築に努める(3)高等学校の学級編制の標準のあり方についても、早急に検討する――ことが必要だとし、少人数学級の実現に向けて議論を始めるよう政府に求めました。

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 また、向こう5年間の段階的な35人学級編制を実現するにあたっては、必要な加配定数を削減することなく、安定的な財源によって措置されるべきだと述べ、「昨今の変化が著しい教育環境の改善に加配定数は必要不可欠なものであり、既存の教育予算の削減や、加配定数からの『置き換え』や『付け替え』がないようにすべき」と政府に念を押し、実質的な定数増をおこなうことを強く求めました。さらに「小学校高学年の教科担任制は、高学年を担当する教員の持ち授業の軽減につながる。教員の持ち授業時数に上限を設け、教員の負担軽減を図り、働き方改革を前進させることも重要」と提案しました。

 次に、法改正により計画的な教員定数の改善が図られ、地方公共団体においては必要な教員を採用・配置しやすくなると言及し、「国は、非正規教員がこれ以上増加することのないよう、地方公共団体に対し、正規教員を計画的・安定的に採用・配置するよう促すことが重要」と指摘しました。

 学校の働き方改革について、新型コロナウイルス感染症に対応して新たな業務も付加され、教職員の命と健康はこれまで以上に脅かされていると指摘し、「子どもたちのゆたかな学びを保障し、教職員がいきいきとやりがいを持つことができる教育現場づくりがこれまで以上に求められている」と述べました。教職が尊敬される職業とのイメージが薄れ、過酷な「ブラック職業」と敬遠され、小学校教員採用試験の受験者数が減少傾向にあることに触れ、「35人学級を担う意欲と情熱をもって教育に取り組む優れた教員を確保するためには、教員採用倍率の低下に歯止めをかける施策の実施が不可欠」と訴えました。そのために、(1)教育職員の勤務実態調査を行い、「給特法」(※1)や、その他の関係法令の規定について抜本的な見直しに向けた検討を加える(2)「人確法」(※2)の趣旨を踏まえた処遇の充実を図る(3)教員から悪評の高い教員免許更新制については廃止を含め、抜本的に見直す――ことを提案しました。

 那谷屋議員は、「私は1982年に横浜市立の小学校の教員になった。通常の新採用者は4月1日付だったが、私は16日採用。その前の年に45人学級から40人学級に制度が変わり、私の配属学年は、4月の上旬に児童が増えたために学級再編成がおこなわれ、学級が増えたことに伴う採用だった」と振り返り、「それからおよそ40年、学校現場は当時とは大きく変わり、求められる児童一人ひとりに行き届いた教育実践が大変困難となっている。今の現場では多忙化が深刻さを増し、一緒に遊ぶことは困難な状態であると伺っている」と懸念を示しました。その上で、学級規模の縮小が子どもたちの学びの環境を改善するための第一歩となると法改正の意義を語りました。

 那谷屋議員は、まだまだ山積している課題に対して、子どもたちに豊かな学びを保障する観点から教育現場の一層の改善を図るため、文部科学省が実態に応じたさらなる政策を推進されることを強く要望し、討論を締めくくりました。

※1 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法
※2 学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法

那谷屋議員義務教育標準法賛成討論(予定稿).pdf

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